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加藤泉展「裸の人」

「裸になること」

katoizumi-1katoizumi-2加藤泉「裸の人」より

 小山登美夫ギャラリーなどがある新川、オオタファインアーツなどがある六本木などの企画展しか行わないコマーシャルギャラリーのほかに、銀座などにあるいわゆる貸画廊でも企画展というものがあり、そこで発表を重ねているアーティストも数多い。加藤泉も銀座の藍画廊などで長年活動を続け、ギャラリーをよく回っている人の間ではよく知られた作家だ。水戸芸術館の「孤独の惑星」展をはじめ、ここ数年活躍が目立ち、いわゆるコマーシャルギャラリーであるスカイ・ザ・バスハウスでの初個展は私も楽しみだった。

 彼は、人間のような「生き物」をモチーフにしているが、幼虫のような、魂のかたまりのようなところから描きはじめ、次第に成長した人間らしい「生き物」の姿を長年かけて描き直して来た。加藤にとって絵は、向き合うそこに何かが生まれてくるもので、孤独できつい作業だという。今回の彫刻は、共同作業なかでつくられた、いつもより楽しげな作品だ。
 原始神のような大きな女性の彫刻、子供ような彫刻は姿勢を低く向き合ってみると、姿とは裏腹にかわいらしい。でも、絵の中で同じ目の高さで出会ういつもの“人々“ほど、対話が浮かんでこなかった。ぽつんと所在なくいる小さな彫刻も、すっくと自立できない彫刻もあっていい。しかし、あれだけ壁に頼るのは、結局絵として見ることになり、なぜ彫刻なのかとも思う。加藤泉は正直な人だ。何か進化論的な一直線な成長ではないやりかたで、作品を展開していけたらいいなあと願っている。でも、言うだけは簡単で、紹介記事を書いたり見続けるだけで、申し訳なく思う。オープニングではなく、がらんとした空間で向き合ったらまた異なるかもしれない。良かったという人もいるし、初めて見る人も多いと思うので、いろいろな見方で見てほしい。

 ところでちょっと話を変えるが、最近、限られたギャラリーを見る人々の間で、こうした道のりのある作家が「まだあまり知られていない発掘された作家」として捉えられがちな状況がある。以前も別の画廊で、「本格的デビュー」と唱われた作家がいたが、それまでの展示は何だったのかと思ってしまう。もちろんコマーシャルギャラリーでは、金銭的、広報的、作品の売買的にも作家の負担が減り、海外にも紹介されるなど、同じ企画展でも大きく違う。しかし、音楽におけるライブハウスでも、演劇における劇場でも、インディペンデントがそれなりにリスペクトされて業界が循環しているのに、美術においてはインディレーベルとメジャーレーベルみたいな区別がなく、適した言葉がないのだ。そのため、作家活動がそこでリセットされているようで、哀しくなる。いや、作品は売れた方がいいので余計なことは言ってはいけないのかもしれない。ファイルがあるので経歴もわかるのだし。
 ただ、貸画廊が淘汰されて別にいい方法が生まれればいいのだが、現状でコマーシャルギャラリーと貸画廊が分断されると、ほとんどの新人は貸画廊から始まるので(アトリエやオルタナティブスペースで公開する作家もいるが、見て回るギャラリストは限られている)、作家にとって良いことでもないように思う。ファイルによるプレゼンも有効だが、空間での展示経験を積むことも大事で、いきなりコマーシャルギャラリーでの機会もなかなかないわけなので、そういう道のりをむしろ紹介し、評価して、今があるという流れでは語れないものだろうか。

2005年4月9日(土)〜5月7日(土)
SCAI THE BATHHOUSE
(JR山手線日暮里駅より徒歩6分)
12:00〜19:00 日月休(4/29、5/3〜5/5の祝日はオープン)
TEL.03-3821-1144

*7月24日まで、ニューヨークのジャパン・ソサエティ・ギャラリーで開催中の「リトルボーイ:爆発する日本のポップカルチャー展」に村上隆やカイカイキキの作家などと出品。

発売中の『DAZED & CONFUZED JAPAN』#37 4月号、HUNG&DRAWNのページに記事を書きました。

words:白坂ゆり

2005-04-21 at 05:39 午前 in 展覧会レポート | Permalink

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» 0503日記 ペン大 from 103
4) 追記。  画家の加藤泉さんの個展『裸の人』@SCAI THE BATHHOUSEの会期が7日まで、残り4日となりました。まだご覧になっていない方はぜひ。  会場のスカイは、谷中にある元銭湯を改築したギャラリーで、煙突もバッチリ残ったかなりいい感じのアトモスフィアを残した場所です。会場Webサイトはこちら→→http://www.scaithebathhouse.com/main/03exhibition/data/IzumiKato/ja.html  明日も宣伝します。(右画像はサイト『[h... [続きを読む]

トラックバック送信日 2005/05/04 2:23:56

» 加藤泉展「裸の人」(5/7) from ex-chamber
SCAI THE BATHHOUSEにて。(4/9〜5/7)http://www.scaithebathhouse.com/main/03exhibition/data/IzumiKato/ja.html  「なんだお前(笑)」「あぁあぁあぁあぁ(笑)」「朝目が覚めてぱっと天井を見たときこい… [続きを読む]

トラックバック送信日 2005/05/20 20:56:29

コメント

はじめまして、note103と申します。
知人の加藤泉さんの個展を紹介しようと画像を探すうちに御ページへ辿りつきまして、あまり見かけない今回の展覧会画像を拝見しましたので、誠に勝手ながら転用させて頂きました。
問題があれば即対処致しますので、その際は大変お手数ですがこちらへの返信等にてお知らせ頂きたく存じます。
御文は必ずしも本展に対する全肯定の内容ではありませんが、私の知る今回の加藤評でも独自なものとして興味深く拝読させて頂きました。
それでは失礼致します。

投稿情報: note103 | 2005/05/04 2:43:16

ご掲載ありがとうございます。画像は私の撮影です。どうぞお使いください。
加藤さんのことは、以前「美術手帖」2001年6月号でも書きました。
展覧会前に発売されたDAZED JAPAN4月号でも紹介しています。
(会場のファイルにもあります)
作家を追い込むのではなくて、長らく聴いて来たミュージシャンのレコードについて書くように一愛好者として書きたいと思いました。
けど、作家の生活のことまで脳裏をよぎってしまって、いやマーケットに対して自分の書いたものの影響力なんてないので、それこそ余計な気を回しすぎるんですが、なにか軽く書けないなあ。。と思いながらでした。
いや、もちろん真剣ですが、アルバムや映画のこと書いてそんなこと気にすることないわけで、鑑賞者からもっと自由にいろんな意見が出るといいなあと思うのでした。
なーんて言われたら、よけいに書きにくいかぬー。

投稿情報: shirasaka | 2005/05/05 12:48:36

こんにちは。
ご返信並びに、掲載のご了承ありがとうございます。
ああ、DAZEDのテキストは会場にもあったのですね。恐れながらチェックしておりませんでした。(でも探して読んでみます!)
”もっと自由にいろんな意見が出るといいなあ”というのは本当にそうですね。私は一応加藤さんの大学の後輩にあたるのですが、制作者としても鑑賞者としても素人で(「鑑賞者」とひと言で言ってもいろいろな立場がありますが)、しかしながらそれでも思ったことは発信して行きたいなーと日々思っております。
こちらのサイトはこの機会で初めて知ったのですが、内容が充実していてとても面白く、今後も随時拝読させて頂きたく思っております。
それではまた。

投稿情報: note103 | 2005/05/05 14:12:56