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Vol.52 金氏徹平(Teppei Kaneuji)

「白は存在感のある“無”というイメージ」

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コラージュは過去に多くのアーティストが取り組んできた技法だが、金氏徹平のコラージュ作品にはこれまでにない新鮮さを感じた。さまざまな既製の「ぬり絵」から黒い輪郭線の部分をピックアップして張り合わせたタイプの作品。化粧品(ファウンデーション)などクリーム状の液体が容器からしたたり落ちる様子、あるいはそのクリーム状のものが落ちて円形にひろがっている様をとらえた写真を掲載した印刷物から切り抜いてコラージュしたもの。コラージュ以外のオブジェ、写真、インスタレーションでも「間」や「余白」にこだわる。レディメイドの小物を用いながら、金氏はじわりじわりと彼の空間にすべてを仕上げてゆく。

■はじまりは部屋を飾るものから

小学生のころからアーティストになりたいと思っていたということなんですが、大きなきっかけはあったのですか?

特別なきっかけはないんですが。小さいときから自分の部屋を飾るためのものをつくっていたんです。高校生のころにデッサンや色彩構成を習いに行っていたときも、受験のためにやっているというより、自分のつくったものを部屋のどこに置くかを考えながらつくっていました。

「飾る」というのはインテリアデザインとか家具づくり、といったことへの興味ではないわけですか?

横に鉛筆たてがあって、ここに自分のつくったものを置くとどんなふうに部屋の空間が変化するか、とかに興味があったんです。紙粘土で何かをつくったり、近所の子供のための裁縫教室でヌイグルミをつくったりしていました。絵を描くことも並列してあったものの、思っているイメージのものが粘土のほうがすぐに手のなかで出来てゆく感じがあって。小学校4年生くらいのときの話しですが。

以前に受けていたインタビューのなかで、「ゼロ」からものをつくり出すことは自分の場合はない、といったことを答えていましたが。

裁縫教室でつくったヌイグルミなんかもそうですが、布や糸のもつ質感などの存在が大きくて、それをどうかたちにするかを考えていました。モチーフがあって、それと僕との関係というか。何かをつくり出そうとするときも、常に他のものと自分との関係のなかに出来上がってゆくと思っています。

■集める

そういえば、作品の素材はほとんど既製のものですね。

ものを集めるのが癖で、作品に使っているプラスチックの容器なんかもそうですが。ひとつルールのような共通項にそって集めています。写真を撮るときもそんなところがあって、蔦を撮った作品などもそうです。集める喜びのようなものがあるんです。

写真を作品にしていることもありますが。かなり前から撮りためているんですか。

カメラを買ったのは大学に入ってからですが。それ以前からレンズ付きフィルムなどで撮ったものを部屋の壁にポスターなどと貼ったりしていました。白いものをとったシリーズも、はじめは無意識に撮っていたのですが、3、4枚撮っているうちに意識するようになって撮りました。

今回の個展の作品についてお聞きしたいのですが。まず写真作品から。

蔦にからまれた構造物や都市の一部を撮った写真ですが。写真作品を前回は横に並べていたのを、今回は縦に並べてひとつのフレームに入れたのは、植物の成長とひっかけて見せたかったからです。土の下で全部がつながっているような気がして恐怖感が襲ってきました。家の近所の何でもない風景を集めたものです。忘れられかけた場所や放置された場所ばかりを撮っているのですが、蔦がからまってゆくまでの時間の振り幅といったものもが見えてくると思うんです。また、植物の有機的な部分と都市にある構築物との対比を見せようと考えました。

立体作品は今回これまでにはなかった透明なものになっていましたね。

こちらの素材は商品を覆っているパッケージであるとか、容器などがほとんどで、何気なく集めていたんですが。集まったものをまとめて見ると、見た目の境界線がなくなっていることに気づいたんです。見ようによってはシャンデリアのようなものに見えてきたり。それを見ていてものの存在の不確かさを感じたり、空虚な感じをもつものという共通点をもとに用途のあるものを集めていくと、今度はスケール感がズレるというか、何かが起こる予兆があったんです。

■余白としてつながってゆく

ぬり絵のコラージュをみたとき、かなりインパクトありました。こんなの見たことないぞ、って。

大学は彫刻を専攻したんですが、彫刻ってでかいものを作らないといけないと思い込んでいた時期があって、そのときは楽しくなくて修行しているようだったんです。でも、家では小さいものをちょこちょこ作っていました。コラージュも家ではかなりやっていましたね。

大学と家で制作するものを分けて作業していたということですか?

何でも一から作らないといけないと思っていた頃もあって、でも、子供の頃、粘土で作品を作っている時にクルマの形が必要ならそのまま横にあるミニカーを組み合わせたりしてしたことを思い出したんです。自分でものづくりの幅を狭めて考えていたときは苦しい時期でした。3年の終わりの制作展のときに既製品のコンセントを連ねた作品を作って出したのですが、その時にやっと解き放たれました。家でつくっているものを見せられないという強迫観念はどこからきていたのか、と思います。急激にそこからいろんなことが変わりましたね。

ぬり絵も集めているんですか?

最初は気に入ったぬり絵を何となく買っていたんですが。一回集めはじめるといろいろ気になりはじめるんです。化粧品の写真をコラージュしたものの素材になる図版も、雑誌や化粧品のカタログや古い雑誌などかなり集めるのにも苦労しました。自分で撮影してみたこともあるんですが、それは違うんですよね。

ぬり絵も白い余白がありますが。写真にしても、ほかの作品にしても「白」がかなり作品のキーワードになるように思いますが。

白はないのにある。空白とか隙間であったり。抜け落ちているけど、そこには余白がある、ということに興味があります。存在感のある「無」というイメージが一番僕のなかでは強いです。前回の個展(2002年)は、旅をして帰ったばかりのときに作ったものを出したのですが。例えば、白い写真のシリーズ(white heat)は、旅していて離れたところを撮っているんだけれど自分の生活の身近なところにもあって、そこに「つながり」とか「接点」とかを感じて、同時に自分のなかに広がりを感じたんです。そして、今度はどう外につなげていけるかを考えはじめました。

コラージュはドローイングにも似た作業ですか?

コラージュもそうですが、ほぼ何か毎日つくっています。新作の化粧品等のコラージュの作品は、化粧品の肌色なんかがパーツとして面白いと思って集めていましたが。最初はどう扱うかは決めていなかったんです。で、床に置いたときに周囲の床が余白として作用した。大きなテーブル、椅子、ヘルメット、壁、いろんなところに張ってゆくと、ものがもっている境界線が崩れてゆくのが見えてきて、全部が余白とともにつながっていくことに気づいたんです。

タイトルはけっこう意味深長ですよね。

言葉の響きでつながっていたりします。「海」と「膿」とか。スケール感の違うものや異物がズレを起こしながらつながってゆく。自分の身体のなかにまで入ってきそうじゃないですか。


金氏徹平 白煙と濃霧 smoke/heavy fog
2003年11月1日(土)―29日(土)
Kodama Gallery
http://www.kodamagallery.com/
大阪市中央区備後町4-2-10 丸信ビル2F
(地下鉄本町駅2番出口より北西へ徒歩2分、京阪淀屋橋駅より南へ徒歩10分)
11:00~19:00(最終日は17:00まで)
日月休
TEL.06-4707-8872

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words:原久子


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「海と膿」2003 インスタビュー
児玉画廊展示風景

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「海と膿(森と膿とトナカイ)」2003 コラージュ

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「海と膿(ホワイトサイエンス)」2003 コラージュ

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「we can see a monster」2003
cプリント12枚 225.5 x 29 cm
児玉画廊展示風景

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「ダストとミスト」2003
透明なオブジェ 約130x70x190cm
児玉画廊展示風景

eye53_06
「白地図」2002
テーブル、片栗粉、他 320x350x70cm
児玉画廊展示風景

eye53_07
「white heat #9」1997~
cプリント 18.8x29cm

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「white discharge Glasses」2002
メガネ、石膏 14x16x5cm

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「white discharge (outlines) #14」2003
塗り絵を使ったコラージュ 40x38.3cm


金氏徹平(Teppei Kaneuji)

1978年 大阪府生まれ
2003年 京都市立大学大学院彫刻専攻修了
 
個展
2002年 空白と漂泊(児玉画廊/大阪)
2003年 白煙と濃霧 smoke/heavy fog(児玉画廊/大阪)
 
グル-プ展
2001年 主張テン(gallery artislong/京都)
2002年 俯瞰景(neutron/京都)
2003年 works on paper(児玉画廊/大阪)
日重(ギャラリーそわか/京都)
その他
2002年 京都市立芸術大学制作展(奨励賞)

2003-11-07 at 09:33 午後 in アーティスト・ヴォイス | Permalink

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トラックバック送信日 2008/02/18 17:59:10

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