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富樫智子展

「表面に現われた奥に潜むもの」


art180_01_1これはロンドンで住んでいた家の庭


■テレビで「窓」の映像が映ったとする。たとえばそこに、少女監禁者のいた部屋だというナレーションが差し込まれると、途端にその見え方が変わってしまう。私達は、言葉や情報とともに、写真を解釈している場合が多い。戦争報道のように恣意的なものをこうも集団で見させられると、個人の名のもとに、感覚的に切り取られたもののほうがまだ信頼できる気がしてくる。

■ここには、富樫智子が2000年から1年間ロンドンに滞在し、ドイツを旅した時の写真がある。なんとなく外国かなと思いつつも、どこの国のものかは聞かないとわからない。2002年の解体前の食糧ビルを撮った写真もある。実際、昭和初期の食糧ビルディングの金具は輸入製品が多かったし、もののデザインには国や時代が混在しているものだ。だから、本来人が何に惹かれるかといえば、色やかたちやそれを浮き彫りにする光や空気などに集約されるのではないだろうか。

■広場の真ん中に穴ができたような、椅子の写真はおもしろい。ベルリンを移動中の駅ビルで見かけたのだそうだ。何の作為もなく、そこには気配が息づいていているような、あるいは時間が止まったような感じがある。鏡のような湖もある。都市のなかのエアポケットみたいな光景だ。

■庭の物干しの洗濯バサミの小さな青色など、さりげないディテールにも目が呼ばれている。ただ、写真のオリジナリティとは難しいところだが、アートの写真にこの感じのものはよくあるという域をまだ出ていない気もする。けれど、アジアの写真や、また、並行して手がけている、半透明の樹脂の中で淡い色が交じりあう立体作品を総合しても、個人が惹かれる対象と気持ちの良い構図(切り取り方)などを並べると、言葉の手前のもので世界はつながるんだなと強く思った。

富樫智子展—その向こうに
2003年5月12日(月)〜17日(土)
Space Kobo & Tomo
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビルB1F 
(地下鉄銀座一町目駅10番出口より徒歩2分、ドトールから京橋方向)
12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
TEL.03-3538-3250

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art180_01_5食糧ビルディングの窓


art180_01_6入口(出口)をはさんだ展示風景


2003-05-12 at 02:26 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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