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エモーショナル・サイト展

「食糧ビルという場所」


art168_01_1食糧ビルディング 撮影:宮本隆司


■食糧ビルディングが取り壊されて14階建てのマンションになる。この展覧会が、足を踏み入れる最後の機会だ。この建物は、1927年(昭和2年)に東京廻米問屋市場(1932年深川正米市場と名付けられる)として、江東区佐賀町に建てられた。丸ビルをはじめ昭和初期の建物はいま命運を分けているが、ここも築75年になる。ここは、明治19年から昭和16年(食糧管理法が制定され、米が国の統制を受ける前年)まで東京の米市場の中心地として栄え、昭和初期には、米商人たちの文化的な交流の場所でもあった。

■食糧ビルディングが取り壊されて14階建てのマンションになる。この展覧会が、足を踏み入れる最後の機会だ。この建物は、1927年(昭和2年)に東京廻米問屋市場(1932年深川正米市場と名付けられる)として、江東区佐賀町に建てられた。丸ビルをはじめ昭和初期の建物はいま命運を分けているが、ここも築75年になる。ここは、明治19年から昭和16年(食糧管理法が制定され、米が国の統制を受ける前年)まで東京の米市場の中心地として栄え、昭和初期には、米商人たちの文化的な交流の場所でもあった。

■1983年、ここのかつては講堂として使われていた空間を、アートスペースとしてよみがえらせたのが、エキジビット・スペース。小池一子ディレクターにより、未評価の若いアーティストに表現の場を提供する、日本におけるオルタナティブ・スペース(美術館でもギャラリーでもない第三の場)のさきがけとして17年間の歴史を築く。また、1996年に小山登美夫ギャラリー、1998年にTARO NASU GALLERYがオープンし、佐賀町エキジビット・スペースに代わってギャラリー小柳とSHUGOARTSの共同運営によるRice Gallery by G2と、同時代の美術を発信する画廊が続く。こちらは、海外のマーケットへの参入をめざす画廊たち。つまりその両極が、同じ建物に共存していたことが特異であったと思う。こうしてのべ19年間、数多くのアーティストを輩出してきた。

■建物には、オーナーの江東食糧販売協同組合をはじめ、主に米の会社が数社入っている。そちらが移転となり、一般には未公開だった場所を含み、ヤン・ファーブル、トーマス・ルフ、奈良美智、村上隆ら内外の36名の作品が展示されている。宮本隆司や安田千絵は、食糧ビルに数回通い、写真の記録を残した。食糧ビルのことを調べていて、写真のなさに途方に暮れる現在、彼らの写真が語り継ぐ力を思う。写真というメディアは薄さがぬぐえないものでもあるが、今回あらためてその強さを考えた。

■杉本博司、廣瀬智央は佐賀町エキジビット・スペース時代に、大きな仕事を遂げた作家。最多出展者の森村泰昌は、地下のボイラー室を、青い薄暗闇の通路に見事に変貌させた音と映像のインスタレーション。ベテランの戸谷成雄の今作は、旧作であっても、この場所だけの感動的なものになった。中村哲也は、マシンが走り去ったあとの火柱を、佐藤勳は電話線を収めた棚のドアをペインティング、須田悦弘の木彫の植物を見つけるのも楽しい。渡部裕二、奥村雄樹のふたりはギャラリースタッフとして、他作家の搬入を請け負いながら自作を発表している。いつの世もそうだが、こうしたなかから次の新しい作家が生まれてくる。また、表に名前の出ないスタッフ、ボランティア、今回は佐賀町会にも支えられている。

■しかし、失いゆくものも大きい。コメの歴史を眺めても国力の弱さがわかり、そういう場所にアートが加わった因縁を感じないでもない。ここでは映画の撮影もずいぶん行なわれた。文化財でもない、一級品ではない、しかし本当にいろいろなモノやコトを受け止めてくれた掌のような建物だったのだ。

エモーショナル・サイト展
2002年11月16日(土)〜11月24日(日)
食糧ビルディング
京都江東区佐賀1-8-13
(地下鉄水天宮前駅2番出口より徒歩8分、門前仲町駅3番出口より12分)
12:00-18:00 無休
500円
TEL.03-5245-5522

words:白坂ゆり

art168_01_2戸谷茂雄
(1階。木彫と周囲の壁に灰を塗っている)


art168_01_3宮本隆司
ピンホールカメラで撮影したので逆さに写っている食糧ビルディング(ライスギャラリー。旧佐賀町エキジビット・スペース)


art168_01_4安田千絵
(3階、江東食糧販売協同組合更衣室、その前は印刷室)


art168_01_5松江泰治
「地表」シリーズより(江東食糧販売協同組合理事長室)


art168_01_6小林正人(3階階段)

2002-11-16 at 06:42 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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