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内田繁の箱の世界
「しまってしまいたい」
美しい赤の漆箱たち
■昔から箱好きだった。はじまりは近所の開業医から祖母がことあるごとにもらってきた薬箱。英語文字が書かれた赤や緑の缶箱だった。何も入れずただきれいに並べておくだけで満足だったが、狭い部屋に空箱は許されず、箱をとっておく理由のためにブロックやおもちゃをしまったりしていた。紙箱とちがって丈夫な缶箱は私にとっては大事なコレクションだった。
■デザイナー内田繁氏も箱には特別なの想いがあったらしい。1999年から10年やると決めてスタートした銀座の画廊でのの新作発表展は、売れっ子デザイナーが何の制約も受けず自由に実験できる貴重な場となっている。今年は長年あたためてきた「箱」がテーマだ。
■第一会場には美しい和箱が整然と並んでいた。丁寧に木材を組み上げた息を飲む程スキのない作品群。6センチ程度の小さな箱から30センチを超える大きなものまで少しずつサイズが異なっており、その差を活かして上手に展示している。私はプライス表を凝視して、それらが蓋と下箱を自在に組み合わせられることを知った。2種の蓋、下箱と3つ別個に値がつけられている。浅い箱は逆さにすればお盆にもなりそうだし、必ずしも蓋と箱のセットで売れているわけではないとのこと。壁面には観音開きと引き戸、2タイプの仏壇がかけられていた。こちら、扉がまっ赤で閉じてしまえばミニマルアートのよう。現代住宅には確かにこんな仏壇が似合うにちがいない。
■変わって地下の第二展示室。こちらはオレンジ、グリーン、無色のアクリル重箱が整列していた。さっきの和箱とは対照的で、透明感があり光を受け入れている。床に置いてある赤い本皮貼りの3点の家具がとても気になった。衣装棚の「トランク」、4つの箱が自在に動いて好きな形を演出できるテーブル「キャビネット」、そして蓋をすれば椅子になる「長持」、とえらく素敵なものばかり。触れれば触れるほど、こんな家具に囲まれて暮らしたいという思いが募る。
■「収納から器としての箱まで、家具と道具の中間である箱の世界を楽しんでいただければとおもいます」(DMにある氏のコトバより)。同展は箱の魅力と可能性を大胆に見せてくれる一風変わった展覧会。これらの圧巻な箱展示に遭遇して、ふと箱好きな自分を思い出した。
「内田繁の箱の世界」
2002年11月18日(月)~11月30日(土)
巷房 + Space Kobo & Tomo
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル3階+地下1階
(地下鉄銀座線「京橋」より徒歩3分)
12:00~19:00(日休、最終日は~17:00)
入場無料
問合せ:杉並区文化・交流協会
TEL.03-3567-8727 03-3538-3250
words:斎藤博美
栗材ときはだ材の箱。展示の仕方が面白い
「厨子」という現代的な仏壇
地下室にはアクリルの箱が並んでいる
自在に動く機能的な「キャビネット」
蓋を閉めれば椅子にもなる「長持」
2002-11-18 at 04:29 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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