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vol.42 中野祐介+林 泰彦(Yusuke NAKANO + Yasuhiko HAYASHI)

「凸と凹みたいにスッポリはまり合う個性」

nakano

まだいっしょに活動をはじめたばかりの中野祐介(写真右)と林泰彦(左)。彼らが作った「テナシイヌ」のパラパラ漫画(フリップブック)をみた時、手のひらの上にひろがっていったファンタジックな世界に引き込まれた。二人は、専攻はまったく違うが、大学に入った頃から帰宅する方向も同じだし、バンドもいっしょにやったりと、身近な存在だった。「ユニット」を組んでいるという意識はあまりないが、二人でしゃべっているとアイデアがどんどん膨らんでいく、時間に追われて苦しいけれど楽しく制作に励む二人にインタビューをした。
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二人で作品を作りはじめたのはいつ頃ですか?

林■ちょうどIAMAS(岐阜県立情報科学芸術大学院大学)に入学して少ししてからなんで、1年ちょっと前ですけど。「バンドみたいなことやろう」と僕から電話したんです。中野君はこの話に絶対にのってくるなとおもてました。

中野■パラパラ漫画描かへんか?と言われて、僕も新しいことができるかもしれない、と思ったんです。学部の1年生の総合基礎という授業で気のあった人たちとグループを組んで映画を撮影しました。そのメンバーの中に2人がいてとても楽しんで制作できたんですよ。実際にパラパラ漫画は作っていて楽しかったです。

いざ二人で作りはじめて問題とか起こらなかったですか?

中野■特に無かったです。むしろ僕としては、日本画科にいる時に、自分のもってるものと日本画で求められるもののギャップ等に矛盾を感じつつ、悩み悩みやってた部分があったんですけど、いっしょに作業始めたらそんなん関係なくなって、凄く楽しくって。バンドやったり、遊びでマンガ描いたり、芸祭でアホなパフォーマンスやったりした時に感じる爽快感、達成感と同じようなものを感じまして。予てからそういう感覚がホンマちゃうんか、って思ってましたし。もともと描いてた絵もアニメっぽいってよく言われてて、そういう意味でも、あってたと思います。

林■手描きのアニメが描かれたパラパラマンガの紙面に、映像を投影し捲るたびに映像と音楽が変化するという作品を制作したんです。その作品を制作するにあたり、中野君に指定したことは「線画で描いて」ということだけでした。映像と音楽は僕が作りました。そして、その作品を中野君の個展(2001年9月)で発表しました。

中野■好き好きにお互いが作ったものを合わせてフリーセッションするような感じのものです。

林■どんな絵を描いているかも知っているし。いっしょにバンドもやっていたので、呼吸もつかめていた。

二人の間で役割分担のようなものはあるんですか?

中野■方法の面では林君のほうが圧倒的に強いので、どうしてもその部分は頼ってしまう所があります。表現内容は、二人ごちゃ混ぜです。 

林■最近は、もともと何となくあった役割分担(中野/絵画、林/映像)のようなものは、あまり気にせんでもいいかな、と思ってます。僕らが持ってるイメージや思考は全然ちゃうもんやけど、それをどんどん混ぜて出していったらいいと思う。僕の持ってるもんと、中野君の持ってるもんは、凸 と凹みたいにスッポリはまるような感じちゃうかな。中野君はね、たまに知的な奥深いことを言うんですよ僕のキャラにはそういうとこないですからね(笑)。僕ら二人ともほんまにテイストも違うしね。藤子不二雄みたいにやっていけたらええかな。あ、それやったら解散するな。初期藤子。

作品として一つにまとめようとする時に、二人の間でバトルとかあるんですか?

中野■今は、基本的に二人の具材が出れば、映像にまとめるのは主に一人がやってる事が多いです。当然、ここはこうした方がいい、等の事はあります。やって行く方向性について、納得するまで言い合う事はよくあります。コンセプトの事とか。まあ、細かい事を考え過ぎずに、感覚的に作っていく部分を残すのは大事だと思っていますが。

中野祐介さんの去年9月の個展のポストカードは、展覧会には伺えなかったのですが、気になって手元に置いていたんです。

中野■僕は日本画専攻(学生時代の作品ファイルを見せながら)で、日本画でやって行こうと思ってた時期があって、あえて「現代美術」とは距離をとるようにする事もありました。といっても、変な絵ばかり描いて日本画の中でも浮いてきて。もともと、どこにも収まりたくない天の邪鬼な性格のせいで、行き場がなくなりつつもあったし、日本画とか現代美術とか、僕の中で線引きは止めて、とりあえずあるもん全部出して行こう、と思って1年前、大学院2回生の時にやった個展です。日本画からはいろんな意味で多くを学んだし、感謝してる事はたくさんあります。

中野さんの個展のDMに印刷されているイヌの絵は2人の映像作品などの中にも登場しますよね。

中野■「テナシイヌ」(片方の前足が途中からないイヌ。作品のなかではこの手の先のもげた部分からさまざまなものが飛び出して映像が展開されてゆく)は、パラパラ漫画をを作るまえから描いていたんです。手が無い事に意味付けをして描いてた訳でも無く、パッとイメージで。でも、いま考えるとカンボジアを旅行したときに地雷を踏んでしまって脚を失った人を見たり、テレビで同じように地雷を踏んで前足を無くしたゾウを見たりした印象が頭に残っていたようにも思います。手塚治虫の「火の鳥」の中に登場する片目片腕の無いキャラの事とか、仏像が好きでよく見に行くんですが、頭や手が欠けてたりする像の事が、何か気になる。「無い」事に何か感じてしまうことがよくあるんです。ラグビーで腰を痛めて僕自身も身体的な不安を抱えていて、いま使っている機能がなくなることへの不安も影響してる気がします。ディズニーの「ダンボ」みたいなハンディキャップヒーローとも言える。人の持つ、何かが欠けている、という身体的精神的なコンプレックスの象徴と考える事も出来るし、仏教でいう「下根」「下品」(凡人の足りない部分、罪)みたいなもの、それゆえの苦悩の象徴、とまで言う事が出来るかもしれない。こういう風にいろいろ考えられるのが面 白くて。僕自身コンプレックスの固まりでもあるし、分身のようなものでしょうか。

林■中野君のギャラリーdenでの個展で僕は初めてこの「テナシイヌ」をみたんです。そのときに、僕はこいつの訴えかけてくるような強さを感じていたようにおもいます。こいつは、中野君自身の投影かなってちょっと感じていました。その後、「テナシイヌ」の変化の過程を僕はずっと目撃することになるんですけど、アニメになって手の無い部分からいろいろなものを出すようになるんです。これもやはり中野君自身の投影だとおもうんですけど。この先、この手の無い部分から何を出しよんねんってゆうのが僕の楽しみでもあります。

二人で活動をはじめてからの1年間で印象に残っているのはどんなことですか?

林■[art in transit] (パレスサイドホテル ・京都)というのはホテルの客室を使った展覧会だったんです。展示に割り当てられた部屋の窓から実写 で映像を撮って、その映像とアニメーションを合成して上映するといった作品「空想ランドスケープ・窓からの風景」を展示する部屋に2泊して作ったんですが。準備が不十分だったということもあったんですけど、それは極限状態での作業でした。ホテルに滞在して制作する意義を意識しすぎて、このような結果 になったんです。あんな苦しいことはもう2度と繰り返さんとこと思いました(笑)。

中野■僕は大阪・千日前にあるギャラリー裏窓で展覧会したときがすごく面 白かったです。何度か展覧会には参加したけど、普通のギャラリーしかしたことがなくて。開廊時間も夕方近くから夜中迄で、風俗店なども近くにある歓楽街の中なんで、お酒の少し入っているおじさんとかが入ってきて、いろんなことを作品について言って帰っていくんです。裏窓のある通 りの雰囲気とかすごく好きでした。

二人ではじめたことでそれぞれの中で変化とかありました?

中野■去年まで主に絵ばかり描いていたので、映像使ったり、何でも自由に出来るのは、毎回ワクワクします。自分で抑圧してたものがいろいろ出て来て、こういう方向が見つかって正直嬉しいです。

林■もともと僕は作品のアイデアを考えるのがすごく好きなんですが、二人でしゃべっていると考えとか作品のアイデアとかがどんどん膨らんでいくんです。二人で活動するようになって、どんどんいろんなことが面 白くなってきています。これからやってみたいと思っているのは、変化の様子とその軌跡の両方を見せてゆくようなことです。プランを作ったので、ぜひ実現したいです。

 

出品予定
■アートアニメーション上映会
「animation soup 2002」
会場:Hep Five 8F Hep Hall
会期:10月12日(土)、13日(日)
(中野+林作品の上映は13日Fプログラム/18:30〜)
■hotel t`point art project [窓辺の緑]
会場:Hotel T`point(大阪市中央区)
会期:11月9日(土)、10日(日)
■[Tip Collection 2002→2003]
会場:扇町ミュージアムスクエア(大阪市北区)
会期:12月10日(火)19:00〜
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words:原久子


eye43_01
「テナシイヌ+虚モノ」
eye43_02
「テナシイヌ」
eye43_03
「FlipBook_Interface」
ビデオ・インスタレーション展示風景

eye43_04
「青空ランドスケープ」

eye43_05
「青空ランドスケープ」展
(ギャラリー裏窓・大阪)外観

eye43_06
「空想ランドスケープ・窓からの風景」

eye43_07
「アニマの跡」

eye43_08
「 空想ランドスケープ・窓からの風景」
ビデオ・インスタレーション会場風景


中野祐介+林 泰彦
(Yusuke NAKANO
+ Yasuhiko HAYASHI)

1976年 東大阪市生まれ
2002年 京都市立芸術大学大学院絵画専攻修了
現在 京都在住
林 泰彦 
1971年 東大阪市生まれ
2001年 京都市立芸術大学美術学部卒業
現在 岐阜県立情報科学芸術大学院大学 (通称IAMAS)在学中
個展
2001年9月 中野祐介展(VOICEギャラリー/京都)
2002年2月 中野祐介+林 泰彦 [青空ランドスケープ]
(ギャラリー裏窓/大阪)
2002年6月 中野祐介+林 泰彦 [空想ランドスケープ]
(ギャラリー千/大阪)
グループ展
2001年8月 [video library] (ギャラリーそわか/京都)
2002年3月 [マルチプルマーケット made in kyoto]
(VOICEギャラリー/京都)
2002年5月 [art in transit]
(パレスサイドホテル /京都)
2002年10月 [animation soup 2002]
(Hep Five 8F Hep Hall/大阪)出品予定
2002年11月 hotel t`point art project[窓辺の緑]
(Hotel T`point /大阪)出品予定
2002年12月 [tip collection 2002→2003]
(扇町ミュージアムスクエア/大阪) 出品予定

2002-09-27 at 02:36 午後 in アーティスト・ヴォイス | Permalink

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コメント

中野氏
元気ですかぁ?素晴らしい活躍をHPで発見したのでコメントしました。
私も大阪を離れて2年なんで、結婚祝いも出来ずにごめんなさい。本当に中野ワールドの活躍を嬉しく思います。また、ドンペリ持参でいきます・・・。
追伸:テナシイヌTシャツ愛用中です。また買うよぉ

投稿情報: テナシイヌ応援団 | 2005/05/21 14:19:53