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vol.39 栗田 咲子(Sakiko Kurita)

「気持ちよく描いていけるという期待感」

kurita

積極的に次々と展覧会に出品してゆくというタイプではない。個展は年に一度か二度。しかし、視覚から心身にしみ込んでゆくとでもいうのだろうか、栗田の作品は脳裏に焼き付き、長く記憶に残る。「南国が好きで、何を描いているかっていうと南国を描いているんです。でも、沖縄には一度しか行ったことがないんです。それも、ずっと以前に」。きっと彼女の心のなかのパラダイスを描いているのだろう。近作はこれまで以上に、リラックスした感じで心地よい絵に仕上がっていた。変化につながるきっかけがあったのかをきいてみた。

何から伺いましょうか?

■実はあんまり自分の言葉は残したくないなって思っていて(笑)。

作品について書いたものを残したくないというですか?

■作品について書いたものを画廊の人から求められて、自分の絵は「ごく普通の絵画らしい絵画だと思っている」という表現の文章を提出して、印刷物に載ってしまったんです(苦笑)。

別に言いたいことがあったということですか。

■何をもってして「普通の絵画」って書いたのか、他の人がそんなことを書いたらきっと腹が立つな、って。そんなに深く考えてもいないのに、わかったような感じに書いてしまった自分のことにも腹が立ちました。…言葉は難しいです。自分の使う言葉には、絵も含めて気をつけたい。私はこんな奴なんだって、いうことがちゃんと伝わるように。

先日、個展(2002年5月21日〜6月2日)を見せていただいたのですが、作品が少し柔らかくなったような気がしたのですが。=

■今回は描きはじめたときから、描き終わるまで、すんなり楽しめました。

作品の題材は、前から変わりませんよね。

■そうですね。ずっと南国が好きで。沖縄とか南の方の感じが。でも、ただ描いているだけではどうするねん、ということで、何故描いているのかとか。自分の絵にどう責任をとればいいのか、とか悩むこともあったんです。これまでは題材に頼ってしまっていたような部分があるのですが、今回の個展への出品作は、題材と好きなイメージがいっしょに自分のものになってきたかなという気がしています。

よく南国へ行くのですか?

■いえ、沖縄に行ったのも一度だけで、それもずっと前なんです。

ということは、栗田さんの頭のなかでその南国のイメージがどんどん増殖していって、栗田さんのイメージの中の南国が絵のなかにあるってことですか。

■そうかもしれませんね(笑)。

今回の個展では、見ていて気持ちよく作品に入っていくことができました。

■いろんなことがつながってきたように思います。リラックスして気持ちよく描きはじめることができたし、気持ちよく描いていけるという期待感が自分のなかに芽生えてきました。学生の頃から尋ねられても、ずっとどう答えていいのかわからなかった気持ちが吹っ切れたかな。

吹っ切れたきっかけのようなものってあったのですか?

■あったのかな…。一つのことをずっと悩み続けていたら、飽きることがある。無意識に縛られ続けてきたことに飽きたのかもしれません。

「飽きた」と思ったとたんに、解放されたって感じ?

■そんな感じですかね。

その憑き物みたいなものって何だったんでしょう?

■前に書いた文章を思い出すと「新しいものを作らなければ」という気負いとかヘンなプライドがあったと思うんです。見たこともないものを描きたいと思って、それも描けないから私の絵は「ごく普通の絵画」とか答えて。そういう答え方をすること自体が悩んでいることの裏返しだったかもしれません。相変わらず、コンセプトがないというか、深くは考えず瞬間的にエスキースも何もなしに描くんですが。描いてゆきながら、「楽しくなかったら、描かないことにしよう」そんな引き際を覚えたというか。無理矢理、絵を構築していこうなんてことはやめようかな、と。

引き際っていうのは?

■この色の見え方が面白いな、とか。イイ肌合いになってきたな、とか。そういうきっかけが何度となく訪れていても、「こんなんでいいのか」「こんなしょうもないことで喜んでいいのか」と疑ってしまって、いい頃合を逃していたように思います。

自分のなかで納得できるものの頃合がはかれるようになったってことですね。

■はい。だから絵を描く時間そのものが短くなってもそんなことは別にどうでもいいのかな。

そういえば、絵のなかにギターがモティーフとしてよく登場しますよね。バンド活動のことを少しうかがってもいいですか。

■バンド「水中ショウ」は4人の編成で、私はコーラスとピアニカを担当していて、ギター担当ではないんですが。ギターのカタチとかいろんなものが好きなのかな。でも、「水中ショウ」は次のライヴで活動を休止するんです。バンドの中での自分のポジションがわからないまま、ここにおってもいいんかな、とかわからないままだったんで、ちょっと残念なんですが。

※「お知らせ」
水中ショウの出演するライヴは2002年6月10日(19:00〜)
大阪市北区天満のDICEにて。
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words:原久子


eye40_01
「murmur」oil on board , 2002

eye40_02
「浜」oil on canvas , 2002

eye40_03
「桃休み」oil on canvas , 2002

eye40_04
「揺光」oil on canvas , 2002

eye40_05
「シバドミントン」oil on canvas , 2002

eye40_06
「ベイサイド自然公園」oil on canvas , 2002

eye40_07
「柴舟」oil on canvas , 2002

eye40_08
「山みかん」oil on canvas , 60.5×80.5cm , 1999

eye40_09
「prairie hen」oil on canvas , 97×162cm , 1999

eye40_10
「ギタリーナ No.5」oil on board , 2001

栗田咲子
(Sakiko Kurita)

1972年 岡山県生まれ
1997年 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了
個展
1995年,96年,98年, 99年,01年, 02年
ギャラリーココ/京都
1999年,00年,01年,02年
複眼ギャラリー/大阪
グループ展
1997年 栗田咲子・喜多順子展(ギャラリーココ/京都)
神戸アートアニュアル'97
(神戸アートビレッジセンター/兵庫)
2000年 VOCA展'00(上野の森美術館/東京)
LIKENESS展(ギャラリーココ/京都)
2001年 Between The Lines展(ギャラリーココ/京都)

2002-04-26 at 04:59 午後 in アーティスト・ヴォイス | Permalink

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