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ジ・エッセンシャル—逢坂卓郎、須田悦弘、大塚聡、渡辺好明

「4種の媚薬」


e155_02_1逢坂卓郎「啓示—Perpendicular」


■この展覧会はいきなり真っ赤な部屋に入ることになる。逢坂卓郎さんの「啓示」という作品であるが、空気までが赤く染まったかのような空間にしばし佇むと感覚が鈍ってくる。ふと、ジェームス・タレル作品を思い出す。奥でランダムに点滅する光が催眠術のように眠気を誘ってやまない。モウロウとしながら次の作品へ向かう。

■この展覧会はいきなり真っ赤な部屋に入ることになる。逢坂卓郎さんの「啓示」という作品であるが、空気までが赤く染まったかのような空間にしばし佇むと感覚が鈍ってくる。ふと、ジェームス・タレル作品を思い出す。奥でランダムに点滅する光が催眠術のように眠気を誘ってやまない。モウロウとしながら次の作品へ向かう。

■今度は暗黒のトンネルを前進しなければならない。「左側の壁を伝わりながら気を付けて進んでください」と監視員さん。出てくる観客とぶつからないようご注意なのだ。暗闇というのはこんなに歩き辛いものかと実感。本当にお先真っ暗だ。手探りでたどり着いた瞬間、無数の星が目に飛び込んできた。四方八方に光が点在し、頭上と足の下へどこまでも続いている。他に誰もおらずこの空間をひとりで存分に堪能。暗闇に目が慣れたおかげで、帰路のトンネル通 過は早かった。

■大塚聡さんの作品にも光がある。鏡の表層の点光が奥へ連続していくという、実にさりげない作品だ。今回はそのバリエーションや、定規を使ったインスタレーションを発表。テーブルに設置されたハンドルを握ることでセンサーが反応し、前面 の鏡に光が灯る作品もあった。彼は日常品をアートの素材にすることで、日常とアートを繋いでいる。

■木彫でリアルな草花を制作している作家はいわずと知れた須田悦弘さん。初期の頃は展示空間の片隅に気づくか気づかないかというくらい小さな草を置いていて、発見した時の喜びを覚えている。「泰山木—花」は、細長いコンテナの奥に開花した花を置いた作品だが、ここの展示はまず裏側の影を見せているのが新鮮だった。大輪の輪郭を幻想的に映し出し、表に回り込んでその実態を確認する。コンテナの幅は大人ひとりが入れる程度。そのため、たったひとりで花と対峙し、これが木彫?と感心するとともに、本当の花よりもリアルだなあと感じたり。

■ロウソクを灯して、その痕跡ごと作品化している渡辺好明さんは、1階のさや堂ホールでタイル模様に沿ってロウソクを並べ、美しい空間をつくっていた。その時は一部だけ点火の跡があり、ロウが床に流れて固まっていた。7階の通 常展示室は、壁面をロウソクでぐるりと囲み、大きな球形のロウソクが床に置かれていた。一定の時間ごとに点火が行われるそうで、会期中に全部燃やされるのだろう。壁面 の焦げ跡や小さく変型していく球体ロウソクが時間やカタチや美術ついて考えさせる。できれば燃えている時に遭遇したい。

■入り口で作品配置図が手渡され、それを見なくてはスムーズに回れない展示構成ではあるけれど、4作家がそれぞれ個別 に展開しているので、行ったり来たりするのもそう苦にはならない。特徴としては、エッセンシャル(=本質的な)という意味のごとく、奇をてらわない現代美術をしっとりと見せていること。アナザーワールドへいってしまうようなトリップ感はないが、普段開けない扉を叩いたおかげでちょっと得したなあという小さな喜びがある。

ジ・エッセンシャル
—逢坂卓郎、須田悦弘、大塚聡、渡辺好明
2002年4月9日(火)〜6月2日(日)
千葉市美術館
千葉市中央区中央3-10-8
(JR「千葉」駅東口より徒歩15分、京成バス(のりば7)で3つ目「大和橋」下車徒歩2分)
10:00〜18:00(金曜は〜20:00、5月3日は〜18:00)
入館受付は閉館の30分前まで
月曜休(祝日の場合は翌日休)
一般1000円 大高生700円 小中生300円(団体・前売りは2割引)
TEL 043-221-2311

講演会 5月18日(土)14:00〜
「現代美術—もうひとつの動向」
講師:鷹見明彦氏(美術評論家)
会場:11階講堂
定員:150名
参加無料

words:斎藤博美

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須田悦弘「泰山木—花」

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「椿図屏風」(江戸時代)の前にさりげなく置かれた須田悦弘の「椿」

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大塚聡「無題」

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定規を使った大塚聡の展示

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渡辺好明「光ではかられた時—オーナメント—」

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ロウソクが燃えた痕跡

2002-04-09 at 12:38 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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