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佐野正興展

「日の出を演出する」


■今年の初日の出は雲がかかっていて出た瞬間が見られなかった。場所は羽田。車を東に向けて半分寝ながら待っていたが、太陽が見えたのは地平線よりずいぶん上空だった。何年かぶりに気合いを入れて見に行ったのに…と残念な元旦だった。

■年末まで開催されていたグループ展に出品していた作品で気になるものがあった。佐野正興さん。24歳とかなり若手。何層ものフィルターを通して風景らしからぬ不思議な写真をつくりあげていて、ひと目で気に入ってしまった。彼の個展が年明け早々にスタートするということで会場を訪れた。

■頭を低くして下り階段で入る面白い構造の会場にもぐりこんだ。壁面はほとんど使われておらず、床に小さなモニターを置いて、2つの映像を見せていた。今回どんな作品を出品するのか予測もしていなかったが、インスタレーションとして見ると今ひとつ淋しい空間。すかさず作品について尋ねた。

■出たり引っ込んだりしている日の出の映像は、佐野さんが裸電球を使って撮影したものだそう。その方法をスケッチしたドローイングが壁にあった。カメラの前で電球を動かし日の出を作り上げている。夏場は富士山の山小屋で仕事をしているという彼は、日本人の日の出信仰を題材にしたかったと語った。富士山頂にご来光を拝みに来て、太陽の動きに翻弄される登山者の声とリンクして、太陽は静かに登ったかと思うと消えてしまう。

■もうひとつの映像はザーという音が聞こえてきそうな砂嵐画面。こちらは写真(一番下)のようなドローイングを150枚も描いて繋げたという。なぜそんな手の込んだことを? ここらへんに彼がこだわる「ネガとポジ」の思想があり、普段気にとめられることのない砂嵐をあえて手描きでつくってみたかったらしい。面白いのはこの映像を販売方法。購入者に不要の使用済みビデオテープを持参してもらい、彼が随所に砂嵐を録画する。

■語ってもらえばとても興味深く、面白い展覧会。ただ目に映った会場からはそれが伝わりにくいのが難点といえばそう。これってコンセプチュアルなアートが直面せざるを得ないハードルだけれど、見る側に「?」だけでなく「!」と思わせる演出も忘れないでほしいと思う。作品について尋ねれば親切に答えてくれる作家なので、在廊していたら声をかけてみよう。

佐野正興展
■2002年1月7日(月)〜1月19日(土)
マキイ マサル ファイン アーツ
東京都港区新橋1-9-2 新一ビル別館2F
( JR「新橋」より徒歩3分、地下鉄「新橋」より徒歩2分)
11:00〜19:00(日休)入場無料
1月12日(土)〜17:00
1月19日(土)〜15:00
TEL.03-3569-7227

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ニセの日の出を撮ったビデオ作品

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「日の出を撮る」と富士山から景色を眺める人を写した「無題」

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これが撮影の種明かし

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「無題」

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作品「無題」の全景

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手描きで150枚も描いたという砂嵐画面のためのドローイング


2002-01-07 at 02:20 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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