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vol.30 吉村やよひ(Yayoi Yoshimura) 劇団「ひげ太夫」座長

「自然にヒゲを描きはじめちゃったんですよ」

yoshimura

「ヒゲを付けた女たちが繰り広げる出し物芸」というようなキャッチで紹介されている劇団が「ひげ太夫」。りりしい身のこなしに可憐なアクロバット(組体操に近い)のナルシスト集団。宝塚と違うのは「ヒゲ」だけかも…。いやいや、彼女たちの魅力はそれだけではない。大道具小道具はほとんど使わず、すべて身体で表現してしまうんだからおそれいった。なんでも一芝居でひとり平均30役くらいこなしているらしい。道端の石も、輝く太陽も、土中のもぐらだって演ってしまう。役者であり作・演出も手掛けるマルチな座長にインタビューした。

ヒゲを付けるようになったきっかけを教えて?

■かつて女子美系の劇団に入っていたんです。当然ながらメンバーは女性ばかりなので、男役にはヒゲやもみ上げを自然に描いてたんですよね。そこでは皆がどちらかといえばヒロインよりも男役をやりたがっていました。当時からシーンごとに任されて仕切ってましたね。そこでは主役は男性、女性が飾りもの的な役まわりだったので、自分のやりたいことと違うなって思うところがあって、1998年、新しく「ひげ太夫」を旗揚げしてしまったんです。でも何がなんでもヒゲ付けてるというわけでもないんです。ヒゲを付ける役者もいるよ、くらいなんですけどね。

吉村さんのやりたいストーリーってどんな展開なの?

■私の作品は男が必ず女に助けられるんですよ。男役は暴力ふるったり偉そうなこと言っ虚勢を張っているんですけど、最終的には女の方が一枚上手という設定なんです。でも単に男性批判じゃなくて、そういう男性もかーわいーいじゃん!みたいな愛情を込めている。女性でなきゃ絶対に描けない男役なんです。前回の公演「猛者蒸し」の時にミチコという女性が登場したんですけど、最初は弱々しいのに最後には男を助けるくらい強くなる。主人公の「お前は強い女だよな。いい女だよ。でも付き合いたくはないな」というセリフに、他の登場人物たちが「うん、うん」頷くシーンがあるんですけど、お客さんはキャハハって笑っていたけど、自分より強いと認められる女性って憧れはするけど男性にとっては絶対に付き合いたくないじゃないですか。だから「そーいうとこあるでしょ!あんたたち!」という男性に対するメッセージでもあるんです。女から見た馬鹿でかわいい男たちって男性の脚本には出てこないんじゃないかなあ。「寅さん」くらいかも。大きく出ちゃいましたけど(笑)。

男役ばかりの芝居ってこと?

■いえ、そんなことないですよ。でも登場人物はほとんど男性です。女性が主人公で面 白かったよっていう芝居ってほとんどないですよね。私自分は女であるという自覚が強くて、男よりも劣ってないという気持ちが昔からあったものだから、いろんな芝居を見にいくと女の役がパターン化されててすごく腹が立つんです。それでつい女が強い芝居を作ってしまう。女の気持ちがわからない男が主人公で「馬鹿ねえ」という女からの視点をいっぱい入れてる。でもそれでいて自分では男役をやっているのって矛盾ですよね。そうできないのは、やっぱり悔しいけどそれだと話が盛り上がらないからでしょうね。でも相手の女役もだいたい私がやることが多くて、女性客からは「わかるわかる、男ってこういう勘違いするよねえ」とか、男性客からは「女って強いなあ」とか「男の馬鹿なとこって女にこういうふうに映っているんだ」とか察してもらえたらいいなあと。別 にそれを知らしめるために芝居をやってるわけではないですが、根本的にはそういう想いがありますね。

大道具や小道具を使わない「出し物」にこだわるのは?

■見ててこっちが恥ずかしくなる演劇って多くないですか? カッコイイことをカッコイイ人たちがカッコイイ状態でやってそれを見ているお客もカッコイイと思ってるみたいな。台本練り上げちゃって満足しているのは自分たちだけっていうのもいただけないし、社会的メッセージを前面 に出して1カ所も笑えないっていうのもお金とっておきながらほとんど犯罪だと思うんです。質がいいものでない限り演劇ってあまり見たくはないですよね。こんなこというといろんな人を敵にまわしそうですが…。でもほんと苦手な劇団が多いんですよ。自分が演劇やってるっていうと、ああいうのをやってるのかって思われるのがすごくイヤですね。私にとって演劇っていうのは「用意してきたものを出すよ!」「ホイきた!楽しいねえ」っていう掛け合いが理想なんです。まずは楽しんでもらってその後で何か感じてもらうっていうのがいい。こんなに段取りを決めてこんなに大がかりに身体を動かさなくてもという意見もありますけど、演っている自分たちも興奮したいし、お客さんにも高揚してもらいたいんです。そのためには練習してきた組体操や口ずさみ効果 音で最高に盛り上げますよって。そのかわり練習量はものすごいですよ。2ヶ月前から週6日間稽古して、残りの1日は衣装作りや参考のためのビデオ見たりとかで、土日は昼夜10時間。結婚もできませんよ(笑)。

稽古は厳しい方ですか?

■いや、灰皿投げたりはしませんよ(笑)。ものを作るのにふさわしい空気を保ちたいから和やかにやるけれども、それぞれが自分に厳しくしてくれとは言ってます。萎縮している状況でいいものってできないと思うんですよ。でも休みもそんなにあげられないし、きちんと覚えてこないとついてこれないわけで、厳しい世界だけに和やな場を心がけてはいますね。みんなテンションはかなり高いですよ。この2、3回でだんだんいい稽古になってきました。

実は初めて見た時、何をやっているのかわからなかったんですよ!

■確かに、最初の10分くらいしたらわかってきましたというアンケート多いですね。そのへんが課題ですよね。最初が肝心だから自分たちの劇団を名乗る「決めのポーズ」やってます。歌舞伎の影響は受けてますけど、あまり劇団名を名乗ることってないと思うんですよ。それにしてもリピーターの方が多いのは嬉しいですね。前半ノリ切れなくて悔しかったから今度は最初からノルぞという気持ちで来てくれるんじゃないでしょうかね。見てくれた人に元気になってほしいと思うし、実際にそういう人もいるんで嬉しいです。こいつらがこんなに汗水かいて頑張ってるのに、自分も頑張らなくちゃって気になったり、残業で疲れて駆け込んできて機嫌が悪かったんだけど、自分でびっくりするくらい笑っちゃったんですとか、最近ずっと笑っていなかったですとか、働いている方のそういう意見ってすごく嬉しいんですよね。難しい演劇論でほめられるよりもずっとね。

必ずラストにNG集がありますよね。あれってほんとにあったNGの再現?

■実際にあったネタもありますが大部分は作ってますね。エンディング用に安心して見られるNG場面を集めてます。お客さんには賛否両論なんですけど、私としては香港映画の真似がしたかったんです。チャウ・シンチーという役者がものすごく好きで、日本では全然知られていませんが向こうでは大スターなんです。彼は自分で台本書いて演出もしているんですが、表情とかうまいんですよ。どうしても彼に近づきたくてそこからパクッてみたり。それで第1回からずっとNG集を入れてるんです。最後にちょっとほっとするひとときが演出できればいいなと思ってます。

 

※ひげ太夫の今後の公演は以下のとおり。興味持った人はぜひ見に行って、白熱の芝居 を体験してください!
2001年8月10〜14日 OFF・OFFシアター(東京・下北沢)
    11月29日〜12月2日 タイニイアリス(東京・新宿)

ひげ太夫 URL=http://member.nifty.ne.jp/higedayu/
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words:斎藤博美


eye31_01この表情を見よ!「猛者蒸し」ポストカード

eye31_02 りりしい座長

eye31_03 こんな組体操の連続!

eye31_04なんでも身体で表現してしまう

eye31_05女役を演じる座長

eye31_06「猛者蒸し」オープニングの決めポーズ

eye31_07稽古はこんな感じ

eye31_08もう1枚の「猛者蒸し」ポストカード


吉村やよひ(Yayoi Yoshimura)

1970年3月 東京生まれ
1989年 小劇場で役者として活動開始
1998年6月 「ひげ太夫」を旗揚げ以後、全作品の作、演出を手掛け、役者としても出演
最近の公演歴
2000年11月 「修験塚」(タイニイアリス)
 同年12月 「修験塚」が東京2000年祭「千年文化芸術祭」の特別 都民審査員賞と入選作品賞を受賞
2001年3月 第7回公演「猛者蒸し」(パンプルムス)
  (※昨年小公演1本を上演し、実際には全8回公演を終了)

2001-04-23 at 01:00 午後 in アーティスト・ヴォイス | Permalink

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