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田端アヤコ「にっぽんの台所」展
「ブラックな笑いに拍手」
日の丸のついた襖を開けてなかに入ると映像が3面に映し出されるかたちになった凝ったインスタレーション
■畳の部屋の向こうに、台所に立って夕飯のしたくをする肉付きのいい主婦の後姿が見える。包丁がまな板の上で軽快なリズムを刻む。鍋の中身がグツグツ煮立つ音。ここまでは、平和な日本の家庭生活の一場面のように聞こえるはずだ。
■しかし、煮えたぎる鍋のなかには脳味噌。どこからともなく聞こえてくるラジオのアナウンスは「日本の明日の天気をお伝えします…。晴れのちコウコウセイ。ところによりチュウガクセイが降るでしょう…」。ボールのなかに割り落とされる卵と、屋上から飛び降りようとする若者とがシンクロする。
■画廊のなかに日本家屋の典型を再現。襖を開けると、映像が三つの面に投影されている。メインの映像の傍らに、別な映像が夕焼け空の街の様子を流していたりして、間合いが絶妙である。アニメーション映像のインスタレーション作品だが、現代日本の社会病理をユーモアたっぷりに表現していて、最後に障子が閉まっていくところなどの出来すぎたつくりに、拍手したくなってしまった。
■「にっぽんの台所」の短編シリーズのオムニバス構成になっている。電子レンジのなかで回転する板のうえで候補者がたすきをかけて演説する『政治家はまわるまわる』、冷蔵庫のなかで小さくなって机にむかうスーツ姿の父親は、妻にまな板の上で首を切られる『パパはリストラ』など。毒をたっぷりもっているのに悪意を感じない若さあふれる作品に、もう一度大きな拍手を!
■ちなみに、これは田端の卒業制作の作品だという。「映像をやっているの?」と問いかけると「映像もやっています」と返ってきた。これからが楽しみな元気のいいアーティストの誕生である。
●田端アヤコ「にっぽんの台所」展
1999年5月4日ー9日
立体ギャラリー射手座(京都)
tel.(075)211-7526
襖を開けると今度は障子がある
八畳間の向こうに台所
この個展のロゴにもなっていたゴキブリマークだが、こうしてみるとおどろおどろしい。
煮立った鍋のなかの脳味噌
首をはねられたサラリーマンらしきお父さんが街をさまよう姿が横の壁に一緒にプロジェクションされる
1999-05-04 at 04:14 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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