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井上信太×吉野央子展
「こんな二人のコラボレーション」
吉野央子作品、手前が「rotated form #1」、奥が「rotated form #2」
■吉野央子さんは、このところ使ってきた皮革素材を、今回はまったく用いずに木のみで作品をつくっていた。回転する形、循環する形といった意味をもつ作品名「rotated form」にも象徴されるように、作品はすべてシンプルで洗練された円い形状をもつ。
■銀箔がはられた盃に似たかたちの「rotated form #1」の表面は、天に向かって口を開き、大いなる恵みを静かに待っている、といったふうにみえた。「rotated form#2」は底の抜けた桶状の容器には、ひょろりとした植物を模した木製の棒が、さりげなく投げ込まれている。みずみずしい生木の薫りが立ちこめている。
■一方、井上信太さんが展開する「羊飼いプロジェクト」は、顔に目鼻のない羊もどきのパネルを、さまざまな街で放牧しながら、モノクロの写真で記録している。昨年、ドイツではじめたこのプロジェクトを、今回は京都、大阪など、井上自身がこれまで生活してきた街のランドマーク的な場所や、気になる場所で繰り広げた。この仕事は彼にとってあくまでも絵画の延長線上にある、という。新しい絵画への取り組みだ。
■撮影途中に起こるそこを行き交う人との偶然とも必然ともつかないコミュニケーション。実際に展覧会場に来るまで、CGで街に羊の群れをはめ込んでいると思っていた人も多いようで、そのギャップも楽しめる。プロジェクトの様子をヴィデオに収めたドキュメントも約22分と大作だが、それほど長いと感じずにみれてしまう。ヴィデオは前田真二郎さんと木村隆志さんの編集によるものだ。衒いのないつくりだが、完成度が高い。
■しいて云うなら、井上さんは絵描きで、吉野さんは彫刻家だ。制作するときの主題へのアプローチの方法もメディアも普段はまったく違う二人のコラボレーション作品は、公募『京を創る』で大賞をとった。十二角形のテントのなかは架空のサーカス小屋だ。外についた穴をのぞきながらハンドルを回すと、アニメーションの曲芸を見ることができる。お寺の修行僧(?)の人たちも並んで、くるくる回して見ながら皆なで大喜びしていたこと(シャッターチャンスを逃しました!)も、ご報告しておこう。
●吉野央子展
1999年5月10日ー15日
信濃橋画廊(大阪)
tel.(06)6532-4395
●井上信太ー羊飼いプロジェクト1999ー
1999年5月10日ー6月27日
(会期中無休、11:00ー19:00)
キリンプラザ大阪(大阪市中央区、
地下鉄「なんば駅」下車5分)
tel.(06)6212-6578
●『京を創る』Peephool Tent
1999年5月14日ー23日
(会期中無休)
智積院境内(京都市東山区、
京阪電車「七条駅」下車10分)
tel.(075)222-4105
吉野央子作品「rotated form #1」の部分、楠のパーツを丹念に組んでゆき、銀箔がはられている。
井上信太作品、最初の部屋で羊たちにお尻を向けて出迎えられる。
中央の壁にあるのは井上さんがこれまで羊を放牧してきた経路の地図。デュッセルドルフの横に京都があったりする(彼の頭のなかの地図をそのまま描き出したもの)。
これまでの羊飼いプロジェクトの記録写真が約60枚ほど展示されている。
二人の共同制作作品「Peephool Tent」。お寺の境内に突如あらわれたサーカス小屋だ。
1999-05-10 at 03:24 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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