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ジェームズ・タレル展
「人間の営みを知る行為」
■「ジェームズ・タレル」というアーティストの名前を知らなくてもゼンゼン構わないし、どういう経歴をもつ人物なのか克明に記憶しておく必要もないと思う。ただし、彼の作品を体験したすべての人は、彼が与えてくれた時間と空間をきっと忘れることができないだろう。
■ジェームズ・タレルは、一貫して「光」と「知覚」をテーマに作品を発表してきた。光を素材にすることは、彼に限ったことではないけれど、人間の知覚を媒体にする(と意識させる)作品という点で、独特の存在となっている。僕たちは考えさせられる、「いま自分が見ているコレは、いったいなんなんだろう?」と。
■僕たちの目は、明暗、時間などに従い休むことなく働き続け、「正確な」ヴィジョンを脳に送りこんでいる。急に明るいところから暗いところへ入ったときの、あの感覚をもって、僕たちは、視覚がどういう機能をもっているのか、おおよその自覚をもっているつもりになっている。タレルの作品が設置された暗い部屋に入ったときや、暗闇に浮かぶ青い光を目にしたとき、順応していく時間とともに脳に送られる様々なヴィジョンを感じる。それが単なる人間の「機能」ではなく、「営み」でもあることに新鮮な驚きを感じるのだ。
■だから、タレルの作品を体験するには、多少の時間が必要になってくる。いわば、僕たちの感覚が、機能から営みにスイッチし、作品を本当に「見る」までの時間が必要になる。それは、一枚の絵画を前にして、近づいたり、離れたり、凝視したり……という行動と似ているようで、実はかなり異なっている。「目で見る」ことの意味が違っている。そして、この違いを知ることが彼の作品を体験することなのだ。
協力:世田谷美術館
「ジェームズ・タレル展 夢のなかの光はどこからくるのか?」
会場/世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2 tel.03-3415-6011)
会期/1998年8月13日(木)—10月18日(日)
ガス・ワークス
体験型の作品。ベッドに横になり、球体のちょうど中心あたりまで送り込まれる。ネオン管とストロボライトによってつくりだされる、刻々と変化する空間を、鑑賞者は全身で体験できる。直径3.5メートル
レイザー
光と空間の作品のひとつ。展示室奥の、仮設の壁のすきまから、蛍光灯やネオン管の光がもれでてくるようになっている。
テレフォン・ブース
電話ボックス状の部屋に入る体験型作品。頭がちょうど直径50センチほどの半球体に入る状態になり、鑑賞者は自ら光やストロボの量とバランスを調節することができる。
「テレフォン・ブース」内部の様子。自分で色を変えられる
ローデン・クレーター・プロジェクト
砂漠と火山帯に囲まれた、アリゾナ州にあるこのクレーターは、タレルのライフ・ワークといえる作品。クレーターから横穴を掘ってでつながれたいくつかの小部屋をつくり、星や太陽、空、つまり地球と宇宙全体を体で感じる壮大な作品。現在進行中。
1998-08-13 at 10:02 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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