モダン de 平野 アート・ツアー
モダン de 平野 アート・ツアー 参加日記
杭全神社の手洗所のポストカードの作品はひらいゆう
■今年で3年目を迎えた「モダンde平野」。雨のぱらつく中、アートツアーに参加した。このプロジェクトの仕掛け人でもある樋口よう子さんは開催期間中の1週間毎日2回このアートツアーのガイドをつとめた。大阪を道頓堀や通天閣周辺といった角度からしか知らない人には、天王寺からJRで2駅めにこんな落ち着いた町があることも是非知ってもらいたいところだ。環壕都市として独自の文化を育んできた平野には、いまはもう環壕はない。驚いたことに、去年までなかった環壕のなごりを一部再現した公園が整備されていた。
■杭全神社(くまたじんじゃ)では“光”を使ったワークショップ「観光会」をしている岩村源太さんたちと出くわした。境内の各所に桐原淳行氏の彫刻があった。同じ作品をギャラリー空間のなかでみたことがあるが、野外それも神社の境内でみるとまた趣きに変化がある。手洗所の手拭いかけのところにはひらいゆうさんが樋口さんに送ってきたポストカードがぶらさがっている。彼女は最近はもっぱら写真を作品につかっているが、特定の人に宛てたメッセージ的な作品というのもなかなか見ていて楽しい。
■毎年ここも会場のひとつになっている大念仏寺。大阪市内で最も大きな木造建築に、しっくりとおさまっていたのは、黄鋭さんの「千手観音」。彼が催したワークショップはだれでも参加のできるものだった。ご住職に選んでもらった“通”という文字は、ここにお参りにくる人達の思いが通じるようにという意味だったようだ。ウエダリクオさんの「WIND DRAWING」は境内にある樹齢数百年の大木の枝に鉛筆をつけ、あらかじめ設置した用紙に風のおもむくままにドローイングさせてみる作品。
■過去の2回と比べるとこじんまりまとまっていたような気もしたが、作品の質をみるとこれまでで最もそろっていたのではないかと思った。1キロメートル四方の小さな町だが、来るたびにいろんな発見がある。残念だったのは岡田武さんに会えなかったことだ。彼は画板のうえに巻紙と墨をのせて、どこかで絵を描いていたのだろうか。全興寺の本堂の縁のところに毎日描いた絵巻物が並んでいた。町の人との交流の様子がコメントといっしょにドキュメントされていた。町の人たちの人柄が伝わってきて、見ているといつのまにか微笑んでいる自分に気付いた。
町はアート モダンde平野
1998年7月19~26日
大阪市平野区JR平野駅、地下鉄平野駅近辺一帯
百年間の因縁深い家と家の間をドアスコープで見ると(藤本由紀夫作品)
「千手観音」黄鋭(「通」という字には願いが通じるようになどの意味がこめられ、ワークショップ開催時に参加者の手形が「通」という時に向けて押していかれたもの)
昔ながらの家屋の格子に倉智久美子のミニマルな平面作品はよくマッチ
黒い巨大なヨーヨーを操りながら商店街を歩く山宮隆
「瞬間移動」井上明彦、10年くらい前からこの近所にあった落書きをそっくりに模写したものを町のなかで移動させている
1998-07-19 at 10:46 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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