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造音翻土-戦後台湾サウンドカルチャーの探索

台湾から岩切澪さんのレポートです。

 

台湾で最も安定して面白い展覧会を企画し続けているキュレーターのひとりに、エイミー・ジェンがいる。2006年の台北ビエンナーレの共同キュレーターを務めたほか、2011年には台湾のサウンドをキーワードに、ヴェネツィア・ビエンナーレ台湾館の展示を企画。2010年よりパートナーのジェフ・ルォとともに運営しているキューブ(立方計画空間)という小さなアートスペースでは、台湾内外の現代アーティストの個展やグループ展、トーク、イベントなどを企画してきた。社会的視点が強い企画の数々は、近年特に高い評価を受けており、展覧会オープニングはいつも多くの若い観客で賑わう。

 

2月22日、彼らが1年以上前から準備してきたという戦後台湾のサウンドカルチャーをテーマにした展覧会「造音翻土—戦後台湾サウンドカルチャーの探索」が、国立台北教育大学の付属美術館MoNTUE (北師美術館)にてオープンした。展示は「主に60年代から現代に至るまでの台湾におけるサウンド、文化、アクティヴィズムについてのもの」(ジェン)となっている。12月に筆者が行ったインタビューにおいてジェンは「台湾で『サウンドカルチャー』(中国語で「声響文化」)というと、サウンドアート、ノイズミュージックなどの限られた意味で使われることが多いのですが、私たちはサウンドを、ポップミュージックなども含めたもっと大きなコンテキストから、社会や歴史との関連の中で捉えたいと思いました」と話した。

 

3フロアある会場では、様々なサウンドに関するドキュメントと、サウンドに関するアート作品の、異なるタイプの展示物が、一緒に展示されていた。サウンドのドキュメントには、ポップミュージックのレコードジャケットやなどがあり、また、古いものでは、日本統治時代に、黒澤隆朝(くろさわたかとも)という作曲家によって行われた当時の台湾のサウンド・フィールドワークも、会場内で自由に聴くことが出来る。

 

サウンドに関するアート作品には、サウンドを通して作品制作を行っている作家によるものと、サウンドについての思考を行う作家によるものの二種類があり、前者では、台湾サウンドアートの草分け的存在、王福瑞(ワン・フールェイ, 1969-)によるインスタレーション《サウンド・バルブ》(2008)や、2007年より台湾をベースに活動しているフランス人サウンドアーティスト、ヤニック・ダウビー(1974-)によるインスタレーション《台湾を3回聴く》(2014) などがある。後者では、戦後台湾を代表する写真家のひとり張照堂(ジャン・ジャオタン, 1943-)による、陳達(チェン・ダー)という名の台湾南部の吟遊詩人を記録したドキュメンタリー映画 (2000) や、堂島リバービエンナーレ2013にも参加していた鄧兆旻(デン・ジャオミン, 1977-)による、日本統治時代に作られ長きにわたって歴史に翻弄され続けた流行歌「雨夜花」についての思考をまとめたヴィジュアル部分とイントロだけを流し続ける部分とで構成されるコンセプチュアルな作品《歌うか、歌わないか?》(2014) などがあった。

 

展覧会タイトル「造音翻土」の「造音」とは、音を作り出す行為のことで、そこには、例えば海の波の音を誰かが録音し再現した人工的なサウンドなども含まれる。ただし、今回の共同キュレーターであるルォは「自然の音をただ録音したというのではなくて、そこに何らかの意思が入ることが大切です。ポップミュージックで言えば、例えば誰かが音楽を作って、コンサートを開くとする。それは自分の「声」を誰かに聞いて欲しいという行為です。そういった行為そのものが「造音」である、それを社会との関連で捉えてみたいと考えたんです」と話す。

02_chen_dysfunctionその意味で最も面白かったのが、1983年台北の西門町で陳界仁(チェン・ジエレン, b.1960-)が行った街頭パフォーマンス《機能喪失第3号》の記録映像の初公開である。チェンがまだ今のような国際的な名声を得るずっと前に行った伝説の作品で、集会やデモが禁止されていた戒厳令解除前の公共空間において、当時議論を醸し出していた立法委員選挙のありかたに対する抗議として、頭に布をかぶって歩くなどのパフォーマンスを数人で行い、最後に警官に取り押さえられるまでの20分あまりを記録したものだ。 この作品はまさにひとつの強い「ボイス」として、彼らの掲げるサウンドカルチャーのコンセプトに符合している。またルォはインタビュー中ティノ・セーガルにも言及していたが、昨今アートの形態としてのパフォーマンスが再び大きく注目されつつある中で、この展覧会は、音の持つ身体性に注目し、リアリティを託そうとしているのであろう。

 

「翻土」とは農業用語で土を耕すという意味でもある。何かを翻すだけでなく、耕すことから新しい生命を育もうという意思がそこにはある。 オープニングライブに押し寄せ、歩道にまで溢れた観客に揉まれながら、ポップミュージックや民間吟遊詩人などまで裾野をひろげた台湾のサウンドの広野の中で、何かが芽吹く音を聴いた気がした。

 

作品画像キャプション

陳界仁 Chen Chieh-jen 《機能喪失第三号》(Dysfunction No. 3)

パフォーマンス、8mm フィルムをDVDに変換、カラー、約 20 分、(撮影日:1983 年 10 月 30 日)

photo courtesy of the Cube

 

 

 

■造音翻土-戦後台湾サウンドカルチャーの探索

 Altering Nativism ─Sound Cultures in Post-War Taiwan

会場:MoNTUE(北師美術館)

会期:2014年2月22日- 4月20日


時間: 10:00~17:00 (月曜休館)

なお、当展は、高雄市美術館に巡回予定(会期(仮):2014年6月7日--- 9月14日)

キュレーター:何東洪(ホー・ドンホン)、羅悅全(ジェフ・ルォ)、鄭慧華(エイミー・ジェン)

 

MoNTUE(北師美術館)公式サイト: http://montue.ntue.edu.tw

The Cube (立方計劃空間)公式サイト:http://thecubespace.com

 

2014-03-31 at 03:56 午前 in ワールド・レポート | Permalink

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