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井上廣子展

「窓の内と外の世界」


art126_03_1写真作品、格子の入った窓の向こう側には外の世界がある


■会場入口のすぐ傍らに窓の写真がある。モノクロのその写真の窓は、社会と自己(=個人)との接点を象徴しているかのようだ。このアーティストは、精神病棟を訪ねて撮影の許可をもらい、人影のない病室やベッド、そして、窓を写真に撮っている。その病室がそうであったように、大型のライトボックスのうえに置いた写真は、部屋のなかにある小さな日溜りにも似たものをリアルに感じさせる。

■床には、使い込んだ櫛や財布、経典、耳かき、日記など、さまざまな品がひとつずつ、同じ大きさの台のうえに載せられ展示されている。これらは、すべてすでに主人を失った遺品だという。同じ台に置き、どんなものも等価に提示することで、日々の生活のなかのたわいのない品々が、持ち主にとってはどれほど大事だったかを知らしめる。

■病室に並んでいるベッドには、布団がなかったり、折りたたまれていたりする。それは、そこを使っていた人が亡くなってしまったことを意味する。アーティストは単に写真を撮っていただけではなく、そこには人と人との関係が存在しているように見える。標本を見せるような淡々とした提示の仕方ではあるが、ある距離をつくることにより、そこに介在するものを顕在化させているような気がする。

■窓は一部が少し開いていたり、ときには閉ざされたままであったりする。ここからの風景をどんな思いで見つめていたのか。視線の主に代わって、アーティストの視線、カメラのレンズが、それを私たちに伝えてくれる。悲しくはないが、人間の孤独が作品に封印されているように思えた。

井上廣子展 記憶・境界・不在
2001年2月19日(月)-3月2日(金)
大阪府立現代美術センター
大阪市中央区大手町3-1-43 大阪府新別館
(地下鉄谷町線、中央線「谷町四丁目」駅下車)
10:00-18:00 (土-16:00)
日曜日休 無料
TEL.06-4790-8520

words:原久子

art126_03_215個のライトボックスが床に並ぶ。ライトボックスのうえには、病室や空っぽのベッド、窓の写真。

art126_03_3ライトボックスのうちの一つ

art126_03_449枚の白い板のうえには、一つずつ遺品が置いてある

art126_03_5遺品の一つのある精神病者の日記

art126_03_6遺品の一つの櫛(くし)

2003-02-19 at 11:30 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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