« 横浜トリエンナーレ2001 | メイン | 太田真理子展 »

vol.33. 伊藤 存(Zon Ito)

「見て "遊べる" ような作品にしたい」

ito

作品を発表するのは、大学の制作展以来だったという2年前のグループ展「FLOW」。このとき以降、伊藤存は制作活動を継続的に行なっている。個展の経験ははまだ1 度しかないが、《横浜トリエンナーレ 2001》にもキャリアのあるアーティストたちに並んで出品予定だ。刺繍を用いた作品は、まさに伊藤存ワールドといえるもの。特別 なことが描かれているのではなく、日常の私たちの視界のなかで注目するのを忘れていたり、記憶の片隅に追いやっているような事柄を大きく取り上げて構成していたりする。こんな視点からものを見ることができたら人生捨てたもんじゃないな、と思わせてくれるような世界が作品のなかに繰り広げられている。取材に行った日はまだ横浜トリエンナーレに出品するアニメーション作品が完成しておらず、忙しい合間を縫ってのインタビューだったが、彼らしくマイペースで答えてくれた。10月には2回目の個展も控えている。

刺繍という手法は学生時代から用いられているようですが。どういった理由からですか?

■学生の時は、本の作品の中にちょこっと出てきたくらいです。僕は、絵具を使って描いてゆくと、線の勢いだとか、にじみとかそういう表現的なことで立ち止まってしまうので。そうこうしているうちに、自分のやりたいことがわからなくなってしまいそうになるんです。刺繍はストロークが短くて、大体同じピッチで進んでいくので、描きたい対象を、画面のなかで優劣つけることなく均一に扱ってゆくことが出来て、仕事をしていても気が楽なんです。なので、何を描こうが同じ質感を保てるという理由で刺繍でやっています。

作品を発表するようになって約2年ほどたちましたが。この2年間に大きな変化はありましたか?

■特には感じないけど…。やりたいこと自体は変わっていないと思います。前から他人が自分の作品を見てどう考えるかは、もちろん意識して作っていました。僕の作品を見ることで、その人の中にあるものを引き出せるような要素があれば、そういうものを作品のなかに入れてゆきたいということは常に考えています。例えば、小さな虫ひとつにしても。

「横浜トリエンナーレ2001」への出品作はこれまでのものと比較するとかなり大きなサイズになっていますが。サイズを変えることで制作上、気をつけたことなどあるのでしょうか?

■サイズを大きくした理由は、単純に会場が広いので、ぱっと見た時に、視界のなかいっぱいに入ってくるようなことができると思ったからです。小さい作品を見せることは、他のスペースでも出来ますし。

刺繍の作品のほかに、青木陵子さんとのコラボレーションによるアニメーション・ビデオも出品されるということですよね。

■二人でつくったアニメーションの前作「念写」の延長線上にあるような作品になります。壁の“しみ"が何かのカタチに見えてくるということがあるでしょ。次の作品はそういったことに広がりを持たせて作っています。なにか一つの強いメッセージを伝えることより、見た人の中で勝手にひとり歩きを始めるようなものに興味があります。だから、映像を見た後に、その人が何かを見て想像力をかきたててくれると嬉しいです。
 見て「解釈する」のではなくて、見て「遊べる」ような作品にしてゆこうとしています。

刺繍の作品とアニメーション作品の違いは、作っていて何かありますか?

■刺繍ではできないことが、アニメーションでは出来るんですよね。「本」の体裁をとった作品もこれまで何回か作りましたが、「本」を作る作業とちょっと似ていますね。本もアニメも色んなシーンで作られているから、一つに絞らなくても良いので、気が楽です。

ユニークなタイトルがついた作品が多いのですが。

■はじめからタイトルがついている場合もあります。作品が出来てからつけることもあります。横浜トリエンナーレに出す作品のタイトルで『よだれのきらめき』は、ヨダレは汚いものとか、だらしのないものを考えられているかもしれないけど。真剣になっていたらヨダレが出てきて、でも頭のなかではこんなに素晴らしいことを考えていて…、そんなふうに考えてゆくと、ヨダレをきらめかせたら、ちょっとはヨダレの格が上がるかな、とか(笑)。『白目の景色』は、普通は黒目でものを見るでしょ。でも、人間は視界には入っていて気配は感じているんだけど、確認しないままぼんやり見ているものも沢山ある。黒目で見ているものではなくて、白目に映っているような、意識していない所に転がっているもの意識することは面白い。という内容なんで、そのままタイトルにしました。

これからやってみたいことなどあれば教えてください。

■いろいろあるんです。手段は何でもいいと思っているし、まだはっきりとは言えないんですが。  僕の作品に『SIGHTS AND PIGS』というぬり絵の作品があるんですけど。普通のぬり絵は輪郭線の中に色を塗るんだけど、その作品はそうではなくて、ブタが一匹だけ描いてあって、それに背景を描き加えていくというぬ り絵なんです。そんな感じの、受け取った人にも、ちょっと頑張ってもらう要素のあるものも作っていきたいです。
 あと、前に作った『動勿牛(どうつぶ)図鑑』という作品は、例えば『カエル』を『カルエ』にしてみたりして、この世には存在しない動物をいろいろ描いて本にしたんです。こういうことを無理矢理やっても仕方ないけど、そういうものの作り方を無駄 にはしないでおきたい。あんな楽しみ方は一つの方法としていいかなと思っています。
 僕は子供の時に、図鑑を見るのが好きだったんですけど、それは図鑑を見て勉強してるのではなくて、それを踏み台にして好き勝手な想像をすることが好きだったんです。誰にもそんな物ってあると思いますが、そんな踏み台になるような物を作ってゆけたらと思ってます。

 

※横浜トリエンナーレ2001
メガ・ウェイブ——新たな総合に向けて
会場/パシフィコ横浜展示ホール、赤レンガ1号倉庫、みなとみらいギャラリー他
会期/2001年9月2日(日)—11月11日(日)


------------------------------------------------------------------------

words:原久子


eye34_01「SIGHTS and PIGS」

eye34_02「カスの本」(表紙)

eye34_03「カスの本」 (中面)

eye34_04「カスの本」 (中面)

eye34_05「カスの本」 (中面)

eye34_06「カスの本」 (中面)

eye34_07「家」

eye34_08「浅瀬の旅行」

eye34_09 「近所の果て」

eye34_10「しりとりおきもの」

eye34_11青木陵子+伊藤存「念写」アニメーション・ビデオ作品

eye34_12 「picnic」


伊藤存(Zon Ito)

1971年 大阪府生まれ
1996年 京都市立芸術大学美術学部構想設計専攻卒業

個展
2000年 「山並みハイウエー」(児玉画廊/大阪)

グループ展
1999年 「FLOW」(児玉画廊/大阪)
「ドーナッツ」展(On Sundays /東京)
2000年 「念写 青木陵子/伊藤存」(児玉画廊/大阪)
「 Twilight Sleep」 (ローマ日本文化会館・ローマ/イタリア)
「Screening Japan」( Hallo!・コペンハーゲン/デンマーク、Room 46・オルフス/デンマーク)
「VIDEO-BAR」(Northern Photographic Centre・オウルンカウプンキ/フィンランド)
2001年 「VOCA 2001」(上野の森美術館/東京)
「横浜トリエンナーレ2001」(パシフィコ横浜/神奈川)

2001-09-07 at 01:23 午後 in アーティスト・ヴォイス | Permalink

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://www.typepad.com/services/trackback/6a0120a853c3af970b0120a853c58f970b

Listed below are links to weblogs that reference vol.33. 伊藤 存(Zon Ito):

コメント